『博士も知らないニッポンのウラ』第 7 回 青山繁晴 - 後編 3

日本も核を持つべきだ!?

水道橋博士

さあ、これは中々、地上波でやったらだめな…。

宮崎哲弥

これは面白いね。

水道橋博士

「日本も核を持つべきだ」。

宮崎哲弥

条件付き (「Yes」)。

青山繁晴

「No」です。

水道橋博士

これはプレイボーイとかでもよく書いてますけど…。

宮崎哲弥

いや、プレイボーイでは、「核を持つべきだ」となんて言ってない。

水道橋博士

そこまでは踏み込まないけど、この問題について書いてますよね。

青山繁晴

宮崎さん、「No」かと思ってた。

宮崎哲弥

いや、ずーっと「No」かと思ってたんだよ。私は「条件付き Yes」です、ずーっと前から。青山さん誤解してるんだけど、「条件付き Yes」。現状では「No」。

青山繁晴

うーん。どんな条件?

水道橋博士

非核三原則の中で、「持ち込まず」まで言うけど、「持ち込まず」なんて守られてないし…。

青山繁晴

守られてません。

水道橋博士

今や、四原則で「語らず」って、このことを語るのもだめだ、っていう…。

青山繁晴

めちゃくちゃです。それは絶対にだめです。どんどん論議しましょう。それが抑止力になりますから。で、こんな技術を持ってるってことも、どんどん宣伝した方がいいです。

宮崎哲弥

私が青山さんの問いに答えて言うと、先ほどね、アメリカは、北朝鮮のように 1 度核を持ってしまった国に対しては、非常に寛容に対処せざるを得ないと仰いましたよね。

これの論理を敷衍していけば、「なんだ。じゃあアメリカに対処するためには、俺の所も持てばいい」と。ベネズエラが持つかもしれない。それに対抗して色々な国が持ち始めますね。そうなった場合には、日本も持たざるを得ない、というのが私の…。

青山繁晴

ああ、そういう条件。状況の変化という意味ですね。

宮崎哲弥

もちろん。要するに、NPT (核拡散防止条約) が完全に崩壊した時は、日本も持たざるを得ないと思う。

水道橋博士

証明しているのは証明している、ってのはありますもんね。

青山繁晴

あのね、僕は、あくまで専門家の立場として「核を持つべきじゃない」と申してるんですけど、同時に…。

水道橋博士

「核は持てますが」っていうようなところですかね。

青山繁晴

そうです。「敢えて持たない」ってことなんです。

水道橋博士

「日本は十分持てますが」ってところですね。

青山繁晴

この番組は、言いたいことを言っていいそうですが…。

宮崎哲弥

構わない。

水道橋博士

構わないです。

青山的「核は持たない」論 その真意を激論する

青山繁晴

もう 1 回言いますが、僕は軍事評論家じゃなくて、本業は戦略家ですけど、やっぱり僕は思想を語らんとしているわけです。だから、「日本が核を持たない」というのは、この国の新しい、新しい私たち自身の理念として申しているんですね。

水道橋博士

意志だと。

青山繁晴

はい。

僕は、これを言う時に、必ず「僕自身は命がある限り日本の核武装に反対する」と言っている。それを、僕が敬愛する漫画家の小林よしのりさんが、漫画をお描きになっていて、僕はこの件を直接小林さんに言ったことはことはありませんけど、漫画の中でね、「青山を多少信頼してのに、命ある限り日本の核武装に反対する、なんてことを言って」、朝生で、「そういう風に発言して、いい子ぶりっ子したので、ガッカリした」とお描きになっているわけです。

これは、僕からすると、真逆、逆さまの話であって、いい子ぶりっ子してるのは、現在核武装に反対している評論家やジャーナリストですよ。僕は、朝鮮半島が、いずれ、核はもう無くならない、南北朝鮮が統一、形だけ統一したようなことになって、日本の新聞が「朝鮮半島に平和が来た」と言っているのに、核はなくならないとなったら、日本国民は、やがて核武装を選ぼうとするから、今いい子ぶりっ子をして反対してる人達は、その時になったら、絶対に翻しています。「やっぱり、状況が変わったから日本は核を持つべきだ」となっている。

だから、僕が言っているのは、今自分がいい子ぶりっ子したいんじゃなくて、必ず僕は孤立するとわかっているからです。やがて 2011 年以降、あるいは、2015 年、2020 年になって、僕が生きているとしてです、僕は必ず少数派に転落しているから。自分でタガを嵌めているわけです。「命ある限り」と言った以上は、僕はもう変えられないじゃないですか、生きている間は。だから言っているんでね。

で、もう一つは、周りが核武装をしていった時に、この国はどうするか? になった時に、これは憲法改正を含めて、この国で民主主義っていうのが登場したのは、たった 62 年前が最初なんです。最初はアメリカがきっかけをもちろん作ったんですけど、日本を戦争で破ることによって。しかし、その後は、たくさんの問題・矛盾を抱えながらも、この部屋にいるこの 3 人も含めて、僕ら自身が民主主義を作ってきたじゃないですか、オリジナルの。オリジナルって、例えば「天皇制と共存をする」、そういうオリジナルの民主主義を作ってきたでしょう。

ということは、私達が、子供たちや孫の世代に向かって、日本はこれから自分達のどんな新しい理念を持つのか。この 60 年間っていうのは、日本は 2000 年で初めて戦争に負けたから、ガーンってショックを受けたまま、全部アメリカ様にお任せするってことできたから、憲法九条も過去の否定だけがあって、一項も二項も過去の否定でしょう? 新しく何をするかの第三項はなくて済んだわけです。しかし、これからは、自分達が新しく何をするかを考えなきゃいけない。

その時に、この国には理念が必要で、つまりこの国を危うくする敵は、兵士や、あるいは武器や、あるいは軍事施設は徹底的に破壊すると。だから僕は「日本は軽空母を持つべきだ」、「原子力潜水艦を持つべきだ」、その前提として、「国民軍を持つべきだ」と。日本の 2000 年の歴史で、初めて国民主権下の軍隊を持つべきだと。しかし核は持たないというのは、私達は、兵士は殺しても、これは国際法が認めていることだから、しかし一般民衆、直接戦争に関わっていない人々は断固殺しません、っていうのが、この国の理念だと思うからです。

それは広島・長崎の体験を、センチメンタリズムで被爆体験としているんじゃなくて、リアルに見ると、アメリカが何で核を持った国に急に優しくなるかというと、広島・長崎に最初に入ったのはアメリカ軍の調査隊だったわけです。日本にも渡していないけど、ワシントンで、辛うじて、辛うじて垣間見たそれを見ると、アメリカ自身が、核がどんなに普通の民衆を、女性と子供を中心に殺すかを一番わかっているから、アメリカは核を持った国には急に優しくなるわけです。そうすると、被爆体験をもう 1 回、全部根っこから掘り返して、アメリカの資料も全部取ってです。

その上で私達は、民衆は殺さないんだと。だから、日本は世界に冠たる民主国家で、アメリカやイギリスよりも、あるいは中国よりも、遥かに道義的な、トップに立つ国だっていうのが、僕らのこれからの、子々孫々の民主国家だと思うから、核だけは持たない。民衆は殺さない。その代り、敵は徹底的に、いざとなったら殺害する。どうしてか? 根拠は、国際法があるから。国際法っていうのは、間違っている部分もいっぱいあるけど、人間が苦しみながら作ってきた、ようやく作ってきた、最低限の共通のルールだから、それに (聞き取れません) をするのは、僕は正しいと思うからです。

だから、最終的に国民合意として核を持つことになったら、僕がその時に生きていたら、国民がそうなったら、その時は頭を下げて「そうですか。従います」に、それはなります。しかし、僕個人、思想家としての僕は、私達の理念は、民衆は殺さない、敵は殺すという理念だと、そういう考え方なんです。

理想と現実の狭間で揺れる核保有論

宮崎哲弥

この方はね、かように、イデアリストなんです。理想主義者なんです。

水道橋博士

それは仰っていますよ。

宮崎哲弥

私はね、リアリストだから、例えば、「一般民衆は殺さない」と言っても、これは通常兵器でも殺せるわけです。今、クラスター爆弾が、どれほどイラク全土にアメリカがばら撒いたクラスター爆弾が一般民衆を殺しているか。あるいは、私達自身の経験からも、東京空襲、アメリカ軍が行った都市空襲というのは、原爆と同じくらいの被害を一般民衆にもらたしているわけ。

そういう意味では、核という物は、大変大量虐殺をする究極の武器ではあるけれど、しかしながら、その民衆を殺す可能性という点においては、一般の通常兵器と変わるものではないし、段々、通常兵器の方も、レベルが悪い意味でかもしれないけど上がってきているので、同じように大量虐殺ができるようになっている、という現実を踏まえた上で、私は、場合によっては、哀しいかな、持たざるを得ない場合というのが来るかもしれない、と思っている。

青山繁晴

ちょっと反論していい?

2 点反論があってね、僕は、宮崎さんが言った通り、理想主義者ではあるけれど、センチメンタリストではないので…。

宮崎哲弥

それはわかっている。

青山繁晴

うん。リアリズムと理想を、どうにかこうにか共存させたいというのが、僕の願いです、命ある限りです。

それが一つと、っていうのは、日本が核を持つべきじゃないというのは、理想論じゃなくて、あくまでリアリズムに乗っかってて。そのリアリズムって言うのは、軍事技術の進展のリアリズムを考えると、日本のハイテクノロジーを使えば、民衆の被害を、周辺被害を最小限に抑える軍事技術を可能だと思っています。今現在でも、既に可能だと思っている。

で、核のように、最初から、とにかく無条件に大量虐殺をする思想を持った兵器と、しかし、民衆は、はっきり言って周辺被害は起きるけれども、最小限度に食い止めるために懸命に努力した兵器は、同じ兵器でも思想が違うんです。「国民軍」にとって大事なのは、軍というのは何をしてもいいというわけじゃなくて、思想を持つという事が大事だと思っているから。

だから、決して理想論だけ言っているんじゃなくて、でもリアリズムだけでも寂しいし、理想論だけでも嘘になるから、それをどうにかして両立させるっていうのが、人に押し付けることはできないけど、僕と、僕は息子に喋っていること、あるいは独立総合研究所の研究員たちに僕なりに喋っているのは、そういうことなんですよ。皆さんに押し付けるつもりは夢ないけれども、自分の生き方としてはそうなんです。

核保有議論を戦わす時は必ずやって来る

水道橋博士

お二人とも、どのくらいの単位かは知りませんが、「日本が核保有国になるだろう」…。

宮崎哲弥

そういう議論が、日本の中で真剣に戦わされる時期が来るというのは間違いない。

青山繁晴

あっという間だと思います。だって 2011 年って言ったって、今から 4 年後ですよ、もう。だから、10 年後には、核保有論者の方が遥かに多数派になってます。

宮崎哲弥

ちなみに言っておくけどね、私は北朝鮮が核武装した程度では、日本が核武装していいとは言わない。もっと厳しいからね、俺の条件。

青山繁晴

もっと拡散した場合。インドネシアもフィリピンも、もちろん台湾も持った場合。そいう言う意味ですね。

宮崎哲弥

そうそうそう。そういうこと。

水道橋博士

これ、4 年後には結果がわかりますから、どうなっているか。

青山繁晴

はい。私、生きていれば、また出ます。

水道橋博士

あのー、もう出ないでください。

青山繁晴・宮崎哲弥

(笑)。


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