金正日政権は崩壊寸前だ
- 水道橋博士
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「金正日政権は崩壊寸前だ」。
- 宮崎哲弥
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それはね、色々な意味があるから難しいんだけど…。
- 水道橋博士
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これ、こう言われてから、もう久しいですよね。
- 宮崎哲弥
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難しいんだけど、俺は「Yes」でもいいや。
- 青山繁晴
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うーん。じゃあ、僕は「No」にします。敢えて。
金正日 重病説
- 宮崎哲弥
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というのも、金正日「政権」というか、金正日の「生命」がどうなるか…。
- 青山繁晴
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そうなんです。金正日さんの病気が、本当に分からないんですけど、ただ、金正日の病状を知っているのは、北京だけじゃなくて、パリです。フランスが一番知っている。それは、金正日さんのドクターが、というか、金一族はフランスの病院をあてにしているので。金正哲 (ジョンチョル) もパリで治療を受けているでしょう。
- 宮崎哲弥
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そうそうそう。
金正日のフランス亡命説
- 水道橋博士
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なんか、それで、亡命用のマンションを買おうとしたって…。
- 青山繁晴
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あのね、この亡命の話で僕はやや腹立たしいのは、僕は前から「アメリカも中国も、金正日を血を流さずに亡命させる戦略を描いていて、部分的に実行している」と言っているわけです。
僕は、しかし、終始一貫してその時に言っているのは、「来年の北京五輪が終わり、その後の 2010 年の上海万博も終わってから、2011 年以降の話」として言っているのに、TV タックルでも、宮崎さんじゃない政治評論家の方や、あるいは司会の方が、「青山さん、金正日が亡命すると言ってたのどうなったの?」って毎回聞くわけですよ。
- 水道橋博士
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はいはいはいはい (笑)。
- 青山繁晴
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僕はそれを 2011 年以降の話だといつも言っているのに…。
- 水道橋博士
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はい。じゃあ、この部分流しますからね (笑)。大丈夫です。
- 青山繁晴
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一般の方が誤解するならわかるんだけど、職業的な人が、なぜ僕がいつも 2011 年以降の話として言ってるのに、「昨日起きなかったから、あなたの話は怪しいんじゃないか」のように…。
- 宮崎哲弥
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でも、そこはさ、もう誰が見てもわかるんだから、個人名を出した方がいいよ (笑)。
- 青山繁晴
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うん。三宅さんと阿川さん…。
- 宮崎哲弥
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三宅さんと阿川さん (笑)。
- 青山繁晴
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僕は宮崎さんに言われたらなんでも喋るからね (笑)。僕は個人名を出さないのが主義なんですよ。
- 宮崎哲弥
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はい。三宅久之さんと、阿川佐和子さんが…。
- 青山繁晴
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まあまあまあまあ。じゃあ、あの二人は一般の人の気持ちを代弁して言っている。それはわかりますよ。
それで、今、博士が言ったこと、金正日の亡命説が本当なのか、当然現地で取材します、記者出身でもあるし。で、パリに行ったんです。パリに行って、フランスの局長に会いました。この人の名前は申せませんが、その政府機関に行くと目立つので、近くのカフェで会ったんですけど。二人じゃなくて、もう一人、日本の外交官がいました。紹介してくれた人。
その、フランスの国家戦略をやっている局長に、「金正日さんが、中国への亡命を嫌がって、フランス、特にパリに亡命したいって話を聞いてきたので、あなたにそれを確認したいんだ」と言ったら、「私はそんなことは知らない。聞いたことがない。あなた自腹でわざわざパリにまで来て、ご苦労なことね」みたいなことを言われて、がくっとなったんです。なったけど、結構長時間色んな話して、そのカフェから立とうとしたら、その人が「でもね、最初の話だけど、違う話なら 1 個聞いている」と言ってですね。
青山が現地で得た 金正日 フランス亡命説の真相
- 青山繁晴
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その話と言うのは、金正日さん本人が、人を使ってですけど、パリの旧王宮を買おうとしている、と。
- 水道橋博士
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ほお、マンションじゃなくて、旧王宮ですか。
- 青山繁晴
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今はマンションの形になっているんですが、元々は王宮だった。
で、僕がびっくりしたのは、いわゆる旧王宮、たくさんあるんですけど、その中には、中東から逃げて行った元王様とかが亡命して生きていて、しかも、フランスという国は、政府に金さえ渡せば、フランス国家憲兵隊という、超法規の国家の警察軍が守ってくれるんです。
- 水道橋博士
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亡命用には、ぴったりですね。
- 青山繁晴
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それが、パリの現実なんです。それで、ストリップショーもあれば、美味しい飯もある、ルーブル美術館もあるっていう。金正日さんの大好きな、ね。
それで、その取引を、フランスは諜報機関を使ってキャッチして、その資金が、はっきりした額はわかりませんが、後で聞いた話だと、400 億くらいじゃないかって話ですけど、その資金が、いわゆる裏資金、つまり覚醒剤、麻薬、偽札、偽タバコで作ったお金ってことをフランスがキャッチしたので、ここからは局長の話ですけど「だから私達は凍結している」って言ったんです。原文英語ですけど。
- 水道橋博士
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なるほど。そのお金は使えないと…。
- 青山繁晴
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僕は、「凍結」という言葉にまたびっくりして、「あなた、「凍結」と言ったということは、やがて上海万博が終わった後、2011 年以降の段階になった時に、日本・アメリカ・中国が、フランスに恩を感じてくれるなら、その凍結を止めて、金正日さんが旧王宮を買えるように、できるように、むしろ凍結しているんだ。そういう意味ですね?」と聞いたら、「そのとおり」とはっきり言ったわけ。「そのとおり」とはっきり言って、「その旧王宮は、金一族が、ちょうど住めるくらいの広さと豪華さがあるんだ」って話までしたんです。
すなわち、フランスはスタンバってる。それから、金正日さん自身も、右手では、ミサイルや核をどんどん開発しながら、左手では、自分の亡命も準備している。だから、したたかなんですけど。だから、こっちに持って行く、つまり金正日政権が崩壊するのを、ソフト ランディングさせることが大事なんです。
金正日の後は朝鮮人民軍の集団指導体制
- 青山繁晴
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で、その後の政権がどうなるのか、誰もが気になるでしょう? それは、僕の北京ルートの情報では、「朝鮮人民軍の集団指導体制になるのが一番良い」と。朝鮮人民軍は、中国人民解放軍と、それなりの関係がありますから。
後継者は異母弟の金平日?
- 青山繁晴
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ただ、その時に、最近の新しい動きとしては、金正日さんがポーランドに閉じ込めている、お母さんの違う異母弟の、金平日 (ピョンイル)、キンヘイニチと書きますが、金平日さんの動静が時々漏れてくるんです。
だから、ひょっとしたら、集団指導体制は指導体制でも、金平日さんは、金正日とは違って、軍にいたことがあるので軍と仲がいい。逆に、金正日さんは、軍にいたことがないですから、軍と仲が悪い。そこに持って行こうとしている気配もあります。
金平日 後継者説が 金正日 重病説の根拠
- 宮崎哲弥
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そこがね、「金正日の病状が悪いんじゃないか」という説の、根拠になっている。
金平日の情報は、今まで一切出て来なかったわけ。それは、金正日が遠くに島流しみたいにして、ポーランドに事実上幽閉に近い状態で、一切メディアに出さなかった。その金平日の動静が、最近、国際的なメディアで流されるようになってきた。これは、明らかに、北朝鮮当局者が、ある意図をもって、流していると思われる。
それは、中継ぎかもしれないけれど、あるいは集団指導体制の一人かもしれないけど、後継の可能性が高いということを世界に示唆するため。そういう風に、年齢の比較的近い人間に、手渡さなければいけないということは、金正日の病状が、かなり悪いのではないかという憶測を呼んでいる、ということです。
強まる 金平日 後継者説
- 青山繁晴
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中国の胡錦濤国家主席は、前の江沢民さんと違って、金正日さんの息子達、日本でお馴染みの金正男、キンマサオさん、金ジャラの、金正男や金正哲さん、あるいは金正恩 (ジョンウン)、こういう息子達に継がせるのは、胡錦濤さんは絶対反対なんです。しかし、金平日さんを中心とした集団指導体制というのは、おそらく北京は受け入れるので、もし金正日さんの病状が本当に深刻だとすると、ちょっと新しいソフト ランディングもあるかもしれないです。
北朝鮮新体制で…
- 宮崎哲弥
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ただ、一つつだけ言っておかなきゃいけないのは、じゃあ新しい指導体制になった時に核を放棄するか。しません。日本に対する脅威が減るか。基本的には減らない。そうですよね?
- 青山繁晴
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そうです。金正日さんの政権が、いずれにしろ後退すると、拉致被害者は、ひょっとしたら全員帰ってくるかもしれません。特に、軍の集団指導体制になったら、「金正日さんが唯一の指導者」という刷り込みを変えないといけないですから。「こんなに悪い事をしていました」ということを見せなきゃいけない…。
- 宮崎哲弥
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逆に言うと、旧体制の一番根深いところにいる奴等を粛清したいわけです。その粛清のネタとして、拉致問題の解決というのは使われる可能性がある…。
- 青山繁晴
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あります。ありますが、それが良い右手だとすると、悪い左手は宮崎さんが言ったとおり、核は絶対に手放さないです。だから、朝鮮半島の核とどう向かい合うのかは、日本は 2011 年以降…。
- 水道橋博士
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永遠の課題なんですね。
- 青山繁晴
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永遠のというか、むしろリアルな、現実の課題です。
北朝鮮国内でクーデター的革命は?
- 水道橋博士
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あのー、国民の 1 割 5 分が餓死してるというデータがあるじゃないですか、北朝鮮。そういう状況で、クーデターみたいなことって、ソフト ランディングって話は聞くんだけど、内部的な要因というのは…。
- 宮崎哲弥
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スターリンがかつて、飢餓輸出ってことをやったんですよ。つまり、国内で、例えばウクライナのような穀倉地帯で飢餓者が出ても、輸出をして外貨を稼げて、モスクワ周辺だけを豊かにしておけば、ああいう独裁体制というのは保つんだよ。
- 水道橋博士
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まさに一緒ですね。
- 宮崎哲弥
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それと同じ事をずーっとやっているのが金正日体制。これは秘密警察とか、そういう物が隅々まで浸透していることもあって、なかなか反逆とかクーデターとかを起こしにくい体制になっている、ということです。
- 青山繁晴
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そのとおりなんですけど、簡単に言うと、北朝鮮で民衆蜂起を中心とした反乱やクーデターはありえないです。だから、軍の動向だけです、問題は。
- 水道橋博士
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軍が金正日体制を倒す可能性、というのはないわけでもない?
- 青山繁晴
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ないわけでもない。朝鮮人民軍がひとたび決心をして、もしまとまれば、金正日さんは対抗する術がありません。というのは、金正日が直接支配しているのは工作機関だけですから。工作機関も武装してますが、軍の火力とは比較にならないので、例えば日本も本当は自衛隊が、1 師団どころか 1 連隊が決心しただけで、警察が SAT を持っていようが関係なく、武力としては勝ってしまいます。それと同じように、朝鮮人民軍がお互い軍の中で疑心暗鬼になるように仕組まれているわけですけど、そこを克服して「金正日がいない方が、自分達軍部にとって都合がいい」と決心しただけで、金正日は争わないで亡命するだろうと、金正日も馬鹿じゃないので。それが、さっきの亡命戦略なんです、米・中が考えている。
朝鮮人民軍の決起を察知すれば金正日は直ちに亡命
- 水道橋博士
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あー、なるほど。じゃあ、そうなった場合の亡命なんですね。
- 青山繁晴
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そうです。クーデターが起きて亡命じゃなくて、クーデターの準備の段階で亡命するだろうと、受け入れ先があったら。
- 水道橋博士
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しかし、我々にとっちゃ、早く決起してほしいくらいですよね。
- 青山繁晴
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うん、決起までしちゃうと、本当に血が流れ出すと、それは多分、この間青森に着いたことでわかるように、難民も含めてとんでもないことになるから、決起の計画を、ちゃんと金正日に分かるように作れ、というところで止めなきゃいけないんです。
- 宮崎哲弥
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そうすると、実際に行動を起こさずして、亡命してくれるから被害が出ずに済むと。もし決起して、市街戦のような状況になれば、犠牲者いっぱい出るし、難民も出るし、混乱が起こるということになりますから。
アジアにおけるカラ梅雨の後の大雨とは
- 青山繁晴
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で、心配しているのは、宮崎さんと同じ感覚だと思いますけど、カラ梅雨の後の大雨。
- 宮崎哲弥
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そう。
- 青山繁晴
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ヨーロッパを歩いた時に、旧ユーゴ紛争とか、コソボ紛争の最中に歩いたんです。その時に、サラエボのサッカー場のピッチに、死体が埋め尽くしていたんです。頭とか腕とかが、真っ黒になって出てたり、そういう所を歩いて「ああ、ヨーロッパは酷い。アジアはこういうことが起きなくてよかった」と思ったんですけど、本当に浅はかであってですね。
ヨーロッパは、冷戦が終わって 18 年間、自ら血を流して、新しい秩序を作ってきたんです。だからユーロが出来て、EU もちゃんと機能していると。しかし、アジアは、日本も含めて、18 年間放置してきたんです。テロ拉致国家はそのまま、中国の巨大な矛盾もそのまま、「内政不干渉」ってことを口実に何もしないできたでしょう。
このカラ梅雨の後の大雨というのは、金正日政権の崩壊も、今僕が語ったようなソフト ランディング戦略もうまくいかなくて、大変な混乱になって、今回の青森の騒ぎでもわかるように、日本が備えの無いまま、カオスの中にぶち込まれるということは、今から心配した方がいいです。
- 宮崎哲弥
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それの日付が、先ほど来から出ている、上海万博が終わった後、つまり 2010 年から 2011 年にかけて勃発する可能性がある…。
- 青山繁晴
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あと 3 年あるんだから、その間に、日本の在り方を変えなきゃいけない。
- 水道橋博士
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なんか、金正日の前に、俺が亡命したくなってきたな。パリかなんかにね。だんだん怖くなってきたよ。
- 宮崎哲弥
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だからね、怖い話をするとさ、今は安倍さんが憲法改定と言っているでしょう。これを私はね、国民投票法で風車までは作ったと。あとは風を待つか、だと。
本当は、自分達で風を起こして、自分達であるべき憲法の姿を作らなきゃならないんだけど、ご承知のとおり、日本では、やっと風車ができると、「憲法改正して軍靴の響きが…」みたいなことを言われてるじゃないですか。自分の力で、自立的に憲法を変えることはできないだろうと思っているわけですよ、政府の連中は。そうすると、風を待つしかないな、と。風がまさに北朝鮮危機になるかも。
- 青山繁晴
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かもしれない。
北朝鮮の脅威が現実化しないと日本は何も手を打たない?
- 水道橋博士
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嫌な風ですね、それは本当に…。
- 宮崎哲弥
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でも、これは本当はよくないんだよ。本当は、理性的に考えて、きちんとした形で、平時に憲法を改定すべきなんだけれども、戦時に際して憲法を変えると、改悪になってしまう可能性が高いんですよ。だから、本当はよくないんだけれど、そういう風な感じね、雰囲気は…
- 水道橋博士
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よく、慎太郎さんが、「テポドンが 3 発 4 発、都市に落ちない限りは変わらない」とか言いますけど、そういう「外圧」というか、そういうのがないと意識がない限りは無理なんですかね…。
ガラリと豹変する日本人の怖さ
- 宮崎哲弥
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そういう時になるとね、日本人ていうのはガラリと豹変するんだよ。これが怖いわけ。
- 青山繁晴
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そう。怖いですよ。同感ですね。
- 宮崎哲弥
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私、最近、「拝啓マッカーサー様」という本を読んで、袖井という歴史学者が書いた本なんだけど、どういう本かというと、敗戦したじゃん、日本が。その時に、日本国民は、敗戦して程無く、50 万通の手紙をマッカーサーに送るわけ。これの大半というのが、「マッカーサー元帥、ありがとうございます」、「マッカーサー元帥こそが、私たち日本人の希望です」。この間まで鬼畜米英って言っていた人達がよ。負けるとこれだけ変わる。こんな占領軍の司令官に対して 50 万通、50 万って言ったら、当時の家の 40 世帯の内の 1 世帯が送った計算になるわけ。こんなに歓迎の手紙を送ったなんてことは、歴史上ないです。そのくらい豹変するの、日本人って。
日本占領という成功体験がアメリカのイラク政策を狂わせた
- 青山繁晴
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この宮崎さんの今の話は、その時だけの話で終わるんじゃなくて、今のアメリカのイラク政策の失敗に繋がっている、アメリカの成功体験なんですよ。
- 水道橋博士
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なるほどね。日本は占領統治が上手くいった。
- 青山繁晴
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最近、アメリカの国防総省の人が僕に言ったのは、青山さん、日本を 1945 年 8 月に占領しました。勝ちました。その年のクリスマスに、もう NHK は讃美歌を流していて、国民は喜んで聞いていたと。だから、正直我がアメリカにとったら、外国人の宗教観は大したことないと。戦争に負けて 4 ヵ月経ったらクリスマスを祝っていたんだ。だから、イスラム教も甘く見てイラクに入って行ったというのは、正直あると。だから、日本の成功体験というのは、半世紀以上を経て、我々のミスに繋がったということをね…。
- 宮崎哲弥
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アメリカの状況判断を狂わせてしまった (笑)。それくらい異常なの…。
- 青山繁晴
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だけどね、僕はイラク戦争が始まる前に、米軍に何度も何度も警告してたんですよ。日本は全然違うと。まず、エンペラーが日本には居て、昭和天皇の一言で国民が治まるけど、イラクのどこにそれがいるんだと。サダム・フセインが嫌いという人はいっぱいいるけど、全然違うと。それからもう一つ言ったのは、結局、君達一神教の人々には、日本人の宗教観ってわからない。靖国も含めて。だけど、イスラムは一神教なんだから、日本とグチャ混ぜにすると、絶対間違うと。だから、イラクに攻めちゃいけないと、いっぱい言ってたんですけど、全然聞く耳を当時は持たなかったですよ。
- 水道橋博士
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ブッシュがね、青山さんと喋ってりゃねー。マンツーマンで (笑)。
- 青山繁晴
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いやいや (笑)。