『博士も知らないニッポンのウラ』第 7 回 青山繁晴 - 前編 4

北朝鮮の核ミサイルはすでに完成している

水道橋博士

さあ、「北朝鮮の核ミサイルはすでに完成している」。

宮崎哲弥

これはたぶんそう (「Yes」) でしょう。どうだろう?

青山繁晴

いや、「No」です。

宮崎哲弥

「No」ですか。「完成」というのはどういう意味ですか?

青山繁晴

完成というのは、去年の 7 月に実験した新しいノドン の上に、10 月に実験した長崎型の核弾頭を、無事に安定的に載せて、発射できる状況になっていることです。まだ弾道に載っていない。

水道橋博士

3 年から、少なくとも 1 年はかかるみたいな…。

青山繁晴

早ければ、あの時から 1 年ですから、今は 6 月でしょう。これは「No」ですけど、1 番早かったら、今年の秋には出てくるかもしれません。でも、それはわかりますよ、おそらく。

核がミサイルに搭載されるまで

宮崎哲弥

これは、何で載せられないの? 上に。現時点で。

青山繁晴

単純な話で、ミサイルというのは、上がる時に非常に振動します。それから、全体に大変な熱を持つでしょう。振動をしても熱が与えられても、そこで核弾頭が核爆発を起こさないという仕掛けが必要ですから。それが不安定なままだと、そこで核爆発が起きて、北朝鮮がゴソッとなくなる、全部じゃないけど、ということになるから。だから、振動と熱に耐えられる、それから発射した直後の問題にも耐えられる、ちゃんと着弾と同時に爆発するというのが必要ですから。

宮崎哲弥

これね、テポドン 2 号は、一般には「失敗だった」と言われているけど、これはどうなんですか?

青山繁晴

テポドン 2 号は、失敗なんですが、元々燃料を 1 部しか入れていないから、テポドン 2 号は見せかけです。

昨年 7 月、アメリカを狙ったテポドン 2 号は見せかけ

青山繁晴

おそらく、去年 7 月のミサイル演習のことを…。

水道橋博士

ハワイ沖に 1 機ですかね?

青山繁晴

いや、ハワイ沖を目指したけど、全然届いてません。

水道橋博士

目指したのが 1 機、それがテポドン 2 号。飛距離があるというか、長距離弾ですよね。それが失敗した、成功したという話を…。

青山繁晴

失敗と言ってもいいんですが、元々テポドン 2 号は飛距離が長いから 2 段式ですから、上がって行って、切り離して 2 段目が飛んでいくわけでしょう。遠くに。この 2 段目の燃料タンクは空だったんです。1 段目の 1 部しか入っていないから…。

水道橋博士

元々、だから飛距離がない…。

青山繁晴

遠くに飛ばすつもりがない。つまりアメリカに本気でケンカをする気はないんです。北朝鮮は。

宮崎哲弥

じゃあ失敗じゃないじゃない。

青山繁晴

ただし、発射角が歪んでいたのも事実なんです。後で燃焼のフレアを見ると、フレアが偏っているんです。こう (上に) 上がるはずが、こう (斜めに) 上がっちゃってるから、そこを捉えて失敗と言っても、嘘じゃないけど本当でもないという話です。

だけど、元々、北朝鮮はアメリカとケンカをするつもりはないから…。

宮崎哲弥

厳密には、長距離のミサイルを飛ばす技術はあるわけ?

青山繁晴

そこはわかりません。はっきり言うと。燃料をフルに、満タンにして、本当に飛ばしたらどうなるのかはわからない。そこは微妙なところだけど、多分ハワイぐらいだったら届くかなあという感じはしますけど。

水道橋博士

多くの評論家の人達が言っていたのは、想像以上に精度もあるし…。

青山繁晴

それはね、それはテポドン 2 号のことじゃなくて、ノドンとスカッドのことをいっているわけです。長いものがテポドン、中距離がノドン…。

水道橋博士

日本に届くものが精度があるということですよね。

青山繁晴

それは、正直びっくりしたのはですね。諸説あるけど、米軍がどう見てきたかというと、1 個だけ軍事情報を言うと、これは「半数必中界」、ミサイルを撃ったら、半分が必中、必ず当たる、カイというのは世界の界、範囲のことです。これは本当は CEP と言いますけど。

水道橋博士

専門用語ですね。軍事専門用語ですね。

精度が上がったノドンミサイル

青山繁晴

はい。元々ノドンは、それが大体 5 km くらい。実戦ベースで。平たく言うと、直径 10 km の範囲内に撃ったミサイルの半分が落ちる程度。だから大したことはないノドンなんか。そう言っていたわけです。

ところが、去年の 7 月に日本海に落ちたノドンを調べると、一番良いもので、これが 0.6 km になっているわけです、半径が。ということは、直径に直すと大体 1.2 km。つまり、タクシーで 1 メーターくらいの距離に半分は必ず落ちるという精度に上がっていて。

これは、大変な衝撃なのは、敢えてはっきり言いますけど、例えば佐世保、ありますね。

知っておきたい佐世保の危機

青山繁晴

佐世保は、連合艦隊司令長官の東郷平八郎さんが発見した軍港で、世界で最も良い軍港の一つですが、良い軍港という事は、山がこういう風に (V 字型に) 迫って、湾が狭くなっているわけでしょう。この迫った山の横っ腹に、横に向けて弾薬庫をたくさん作っているわけです。自衛隊も米軍もです、旧軍時代から。

その山の、弾薬庫の上に、民家がいっぱい建っていて、あろうことか、佐世保市は、市初めての高層市営住宅を、その弾薬庫の上に建てているわけです。そこに、命中精度の上がったノドンが集中着弾すると、核じゃなくて通常弾道だけで、誘爆に誘爆を起こして、小型核爆発くらいのものにはなってしまう…。

宮崎哲弥

佐世保壊滅。

青山繁晴

佐世保壊滅なんですよ。それで僕はすぐに、去年の 7 月にミサイル実験があった時に、佐世保に行ったんです。佐世保の市当局と連携して、弾薬庫を確認して、本当に背中がゾッとしてですね。

さらに、アメリカ海軍大尉と話をしたんですけど、アメリカ軍は非常に危機意識を持っていて、佐世保にいる、強襲揚陸艦エセックスとか、そういうものがいるんですけど、それをエンジンが温まらないまま、すぐに外に避難するにはどうしたらいいかを、アメリカ軍は考えているわけです。

ところが日本では、佐世保の市民に対して、さっき「キナ臭い話だな」と仰ったけど、キナ臭くても、国民は知るべき、知らなくちゃいけないのに、佐世保市民はこれをよく知らないまま、弾薬庫の上で暮らしているわけですから。

水道橋博士

ネットで見ている人、佐世保市民、「えーっ!?」って言ってますよ。

宮崎哲弥

あのね、北朝鮮問題って、私は欺瞞的だと思うのは、北朝鮮問題というと「拉致問題」と私達は。拉致問題はとても重要な問題、日本にとって極めてバイタルな問題、重要な問題なんだけれども、それと同じくらい「ミサイル問題」、「核問題」というのは重要なわけ。

軽視されている核・ミサイル問題

宮崎哲弥

ところが、国内ではどういうわけか、ちゃんと広報されていないのか、本当は同じくらい重要でなければならないんだけど、「拉致問題」ばかりが注目されて、「核問題」、ましてや「ミサイル問題」なんていうのは、下の方に置かれているわけですよ。これは、私は、政府の広報活動として大変まずいと思う。

青山繁晴

そのとおりです。

水道橋博士

危機がアナウンスされていないですよね。

青山繁晴

そう。されていない。

宮崎哲弥

はっきり言うと、青山さんに言ってもらった方がいいけど、北朝鮮の核は、北朝鮮の大半のミサイルは、日本に向けられているものですよね?

水道橋博士

おおっ。すいませんすいません… (フリップを探しています)。


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