『博士も知らないニッポンのウラ』第 7 回 青山繁晴 - 前編 2

独立総合研究所 代表取締役社長・青山繁晴

水道橋博士

やっぱ、政府の中枢の方にこうやってお話しているような方ですから。哲っちゃんもそうなんですけどね。

宮崎哲弥

いやいやいや。政府の中枢だけじゃなくてね、CIA とかね KGB とかね、よう知っとんねん。この人は。怖いで。

青山繁晴

あのー、念のため申しますと (笑)、利害関係は一切ありませんから。

水道橋博士

情報収集のために。

青山繁晴

そうです。

水道橋博士

そもそもね、テレビを見てる人が絶対に疑問に思うと思っていたのが、「独立総合研究所」っていつも出るじゃないですか。「これはいったい何なんだろう」と。「どこでどういう風に商売をしている人なんだろう」って思うって。それを説明している番組ってないんですよ。

青山繁晴

ああ、ないでしょうね。

共同通信社で記者歴 20 年

水道橋博士

そもそも、経歴っていうんですかね。記者ですよね? 元々は…。

青山繁晴

そうです。共同通信の記者を、合計 20 年弱です。

水道橋博士

かなり長い期間ですよね。

青山繁晴

ペルー日本大使公邸人質事件ってあったでしょう、96 年に。

水道橋博士

9 年前ですね。

青山繁晴

武力解決から今年ちょうど 10 周年ですけどね。あれがなかったら僕はそのまま記者だったですよ。

水道橋博士

あの話をテレビでオンエアされることは殆どないんですよ。

宮崎哲弥

ない。

青山繁晴

この間、関西の報道番組で初めてやりましたけどね。

ペルー日本大使公邸人質事件 武力解決の真実とは

水道橋博士

ずっとそこに居続けて解決する瞬間も見たし、だけれども、日本で伝わったのは「大統領の英断だ」という事で英雄に…。

青山繁晴

フジモリ大統領をヒーローにしちゃった。大間違いです。

水道橋博士

それは違うということを見た、ということですよね。

宮崎哲弥

実際には何が起こったの?

青山繁晴

まず、テロですから、テロリストが最終的に死刑になってもそれは仕方がないです。

宮崎哲弥

あれね…。

青山繁晴

ちょっと一言だけ。しかし、死刑になるのは裁判があってからじゃないですか。

宮崎哲弥

そうそうそうそう。

青山繁晴

その場で好きなように切り刻んで虐殺していいっていうのは民主主義じゃないですから。

武力解決のウラで虐殺があった

宮崎哲弥

うん。あれね、一般の報道でも例えば「手を挙げているのに撃ったんじゃないか」という風な報道が一部当時ありましたよね。

青山繁晴

そうです。手を挙げているどころか、後ろ手に縛られて、例のトンネルあったでしょう? 武力突入する、あのトンネルから公邸の外へ出して、ペルーの普通の国民に見せてから、もう一度引きずり込んで、女性ですけど、四肢を切り落として強姦した、というのまであったんです。

宮崎哲弥

四肢というのは手足を切り落として…。

青山繁晴

手足を切り落としてです。

宮崎哲弥

生きたまま。

青山繁晴

生きたまま。

宮崎哲弥

凄いね…。

水道橋博士

いわゆる見せしめというか…。

青山繁晴

見せしめです。

水道橋博士

「政権に逆らうとこういう事が起きるぞ」ということをペルーに見せるために…。

青山繁晴

そのとおりです。ペルー国民に見せるためです。

水道橋博士

見せるためにやったということですよね。

決して英雄的な解決ではないということを仰っていたんですよね。そういうことは、その時の被害者も含めて発言する人がいないというか、口を封じられたんですかね?

青山繁晴

僕は言っても言っても通じない事が多いんですけど、大体僕は軍事評論家じゃないし、軍事だけじゃないし、評論家じゃないから。それも言っても言ってもなかなか伝わらないと同様に、ペルーの件も「フジモリは英雄じゃない」と言い続けて 10 年。

最近どうして、例えばテレビでも若干そう言えるようになったかというと、ペルーで裁判が始まったからです。今言った、後ろ手に縛られたテロリストも含めて、「その場で殺したのは良かったのか」と。「裁判にかけてから、死刑なら死刑にすべきだったんじゃないか」というね。裁判がペルーで始まったから、僕も言えるようになったし。

共同通信社、退社のウラに潜む真実

青山繁晴

ただね、僕が共同通信を辞めた理由は幾つかあるんですけど、全部ペルー事件に関わることですけどね。

一つは、当時は日本人の人質の方々が今言った話を僕ら取材団に証言されたんですよ。

水道橋博士

最初の内は…。

青山繁晴

ええ。命の危険を冒して。僕にも (尾行が) ついてましたから。尾行といいながら姿を見せながら尾行をするってやつです。

水道橋博士

へえええ。

青山繁晴

そういう状況の中で人質の方が証言してくれた。つまり「裁判にかけずにその場で虐殺した」と証言をしてくれたのを、記事にはしたんですけど全部ボツになったんですよ。

ただ、僕はその時、共同通信の判断としては断固正しかったと今でも思います。組織としてはあれしかなかったです。もし報じていたら共同通信は南米にいられないし、僕らの命もわからなかったから。ただ、僕個人としてはやっぱり責任を取るべきだと思ったので、聞いたものを記事にできなかった以上は、記者を天職と思っていたけど辞めようと思いました。それだけが理由じゃないんですけど。

例えばね、現地対策本部って日本政府が持っていたんですよ、ホテルの屋上に。それで、その下に部屋を構えていたんですけど、連絡が取れないから、ボーイさんに頼んで紙を渡してもらうわけですよ。ボーイさんにお金を渡して、大変な額のお金ですけど、ペルーにしては。で、紙を渡して、日本政府の人に渡してもらって、返事の紙をそのボーイさんからもらう、ということをやっていたわけですよ。で、半年居ましたから、そのボーイさんへの支払いは相当なものになりましたよね。でも領収書ないですよ。で、なおかつ、日本政府の誰に渡したかということを僕は言えませんよ。棺桶まで持って行くんです、これは。取材源の秘密ですから。

でも、はっきり言うと共同通信の経理が「日本政府の誰かをはっきりさせないと、これは疑問のお金になっちゃう」と言われて、そういうこともあって「そろそろ潮時かな」と思ってですね。45 才でしたけど…。

水道橋博士

ちょうど我々と同い年の…。

青山繁晴

今 45 才ですか? 若く見えますね。博士も (笑)。

宮崎哲弥

(笑)。ということで、正当に使ったお金を疑惑にかけられたということで辞めちゃった…。

青山繁晴

「疑惑」とは言われなかったんですけどね。でも、取材源を明らかにしろって、そういうことをいう報道機関になったら「共同通信よくないな」と、正直思いました。

宮崎哲弥

「ありえないだろう」と。報道機関が事情をわかっているのに…。

青山繁晴

そう。それは政治部もどこもね「そんなの言えるわけがないだろう」と突っぱねるのが当り前じゃないですか。

宮崎哲弥

当り前だね。うん。

水道橋博士

なるほどなるほど。そうして辞められた後…。

青山繁晴

三菱総合研究所。

水道橋博士

に、勤められた後、この独立総合研究所。

青山繁晴

そうです。

独立総合研究所とは?

水道橋博士

だから「独立」っていう意味っていうのは「紐付きじゃない」とか、そういう企業の…。

青山繁晴

そのとおりです。一言で言うと「紐が付いてないよ」ってだけのことです。

水道橋博士

という意味なんですよね。「総合研究所」って色々ありますけど、大体が企業の傘下にある…。

青山繁晴

日本は基本的に全部そうです。旧財閥か銀行か証券会社か…。

宮崎哲弥

大体、採算が取れないところが多いので親会社に庇ってもらっていると…。

水道橋博士

ええ、そうですよね。となると、独立総合研究所というのは紐が付いていないわけですから、自分達で情報を収集して、それを売っているわけですよね?

青山繁晴

情報を売っているわけではないです。

水道橋博士

「どういう風にこれ商売になっているんだろう」と思っているんです。

青山繁晴

ええ。まずね、反権力を標榜する人ほど「青山は怪しい」、「独立総合研究所も怪しい」と仰るわけです。で、反権力を標榜する人ほど、例えば「三菱」って名前が付いてたら怪しくない、それから「三井物産戦略研究所」って「物産」が付いていたら怪しくないって、そういう発想なんですよ。

宮崎哲弥

そもそも「反権力」って誰?

青山繁晴

いや (笑)。

宮崎哲弥

(笑)。誰か全然想像つかない…。

青山繁晴

「反権力を標榜する人々」。

水道橋博士

「反権力を標榜する人々」との権力との癒着が一番困る、っていうのを常に書いて…。

青山繁晴

いやあ、博士はよく研究しておられると思う。

そういうのを口癖にしてる…。

宮崎哲弥

ああ、そういう評論家みたいなのがいるんだ。なるほど、わかった (笑)。

水道橋博士

意味はわかりますよね。

青山繁晴

ちなみに、宮崎さんの事ではもちろんないです (笑)。

宮崎哲弥

私、反権力じゃないですよ (笑)。

水道橋博士

「三菱」とか「野村」とかついてる方を信用するっていうこと…。

青山繁晴

そうそう。

宮崎哲弥

まあ、ありがちな話。

水道橋博士

ありがちですよね。

青山繁晴

それで、「怪しくない」って説明するのは、本当は気分が悪いんですけどね。なぜ自分で「怪しくない」って言わなきゃいけないのか…。

水道橋博士

なるほどなるほど (笑)。

青山繁晴

収入源はですね、まず僕の講演とかテレビ出演とか、何とかかんとか一切合財を会社に入れて、僕の財布には 1 円も入れないです。

で、もう一つは、政府機関や自治体や企業から調査研究の依頼が来ますね。営業は、正直言ってあまりしませんけど、来ますね。来た中で、これは格好良いことを無理に言ってるんじゃなくて、ちゃんと国民益、国民の利益になる、それこそ怪しくないものについては受けている。

例えば、原子力発電所。うちは原子力を支持していますから「原子力発電所のテロからの守りは実際にどう変えたらいいのか」とかです。

例えば、企業だったら、僕は記者でしたから、「広報の在り方を改革したい。ちゃんとユーザーにわかるような広報にしたい」。

そのようなものだけを受けて、その委託金、その 2 種類でうちは運営しているわけです。

ここから、安倍元首相関連の話に移りますが、カットが多く、会話が繋がらない個所が多くあります。

水道橋博士

あの、安倍首相とお話するとかっていうのは、あれはフリーなんですか?

青山繁晴

もちろん無償の行為ですし…。

水道橋博士

でも、1 週間前は、安倍総理と対談されたりしていましたから…。

青山繁晴

たまたま…。

安倍首相の興味深い食事の習慣

青山繁晴

昼飯って、ごく質素な昼飯でしたけど、鮎の塩焼きが付いていたんです。ちっこいの。そのハラワタを安倍さんが箸でガーッとかき出して。僕は食べないのかと思ったんです。僕の知っている安倍さんってハラワタは割と苦手だったと思うから。ところが、それからムシャクシャと食ってですね。それから、なぜか冷えているご飯なんですけど、冷えているご飯もガバガバガバッと食ったわけです。

もともと育ちがいいから、おっとり飯食うじゃないですか。それがガバガバガバと入れるから、これは松岡さんの、松岡ショックでなんかこう神経がおかしくなってるのかなあと思ったのですが…。

宮崎哲弥

いや、違う違う違う…。

青山繁晴

うん。違うんですよね。そのとおりで宮崎さんよく知っているけど。後で周りの人に聞いたら「総理になってから、とにかく腹に物を入れようとしているんだ」と。

宮崎哲弥

そう。ガツガツご飯を食べるようになった。

青山繁晴

いやあ、よく知ってる…。

宮崎哲弥

昔はおっとり食べる。やや悪い言い方だと、がっつくように食べるようになっちゃった。あれはやっぱりね…。

水道橋博士

首相のストレスですか?

青山繁晴

違う違う。

宮崎哲弥

時間がないから。

青山繁晴

時間がないのも…。

宮崎哲弥

時間がなくて、とにかく無理をしてでも食べないとやっていけないからということで、多分…。

青山繁晴

そうそう。まず腹に物をいれて、ね? 体を維持しようと。

水道橋博士

スタジオでおにぎり食べてる哲っちゃんと一緒ですね (笑)。時間がないから。


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